遠心分離に超音波照射技術を融合することにより超高粘性のプレゲル溶液からマイクロゲル粒子を生成

遠心分離に超音波照射技術を融合することにより
超高粘性のプレゲル溶液からマイクロゲル粒子を生成

 国立大学法人体球网,足球即时比分大学院工学府機械システム工学専攻の板東雄太氏、同大学院工学研究院先端機械部門の倉科佑太准教授、田川義之教授、および慶應義塾大学理工学部機械工学科の尾上弘晃教授は、遠心力によるマイクロサイズの液滴生成技術に超音波振動を融合することにより、従来の100倍以上の粘度をもつ超高粘性プレゲル溶液を微細管から射出できる技術を構築し、これまで生成が困難であった高濃度のマイクロゲル粒子の生成に成功しました。この成果により、今後、マイクロゲル粒子を用いた薬剤徐放や細胞培養による創薬研究や再生医療が期待されます。

本研究成果は、Wileyが発行する「Small」掲載に先立ち、5月26日にオンラインで公開されました。
論文名:Synthesis of Hydrogel Microparticles from Ultra-High-Viscosity Pre-Gel Solution by Combining Centrifugal Force and Ultrasonic Vibration
著者名:Yuta Bando, Ryota Kawamae, Ru Konno, Hiroaki Onoe, Yoshiyuki Tagawa, Yuta Kurashina

URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/smll.202412715

背景
 
高分子の三次元網目に水を含んだハイドロゲルは、センサやアクチュエータ(エネルギーを機械的な動きに変換する装置)として産業に広く用いられています。医療分野では、髪の毛の太さと同程度の直径を有するマイクロゲル粒子に加工することで薬剤送達、細胞組織形成やバイオセンサといった応用が期待されています。一方で、医療応用では微量で貴重な試料を清潔に用いる必要があることから、ハイドロゲルのマイクロサイズへの加工方法が研究されてきました。その中でも、遠心分離機による遠心力を用いた滴射装置によるマイクロゲル粒子の加工方法(遠心分離手法)が近年報告されています。この方法は、微細なガラス管の先端から高分子のプレゲル溶液(注1)を遠心力により射出して液滴を生成することで、不純物を混入することなく、マイクロゲル粒子を生成することができます。しかし、遠心分離機内の滴下装置に搭載された微細なガラス管は先端が細いために詰まりやすく、射出できるプレゲル溶液の粘度には大きな制限がありました。

研究体制
 本研究は、体球网,足球即时比分大学院工学府機械システム工学専攻博士前期課程の板東雄太氏、河前遼太氏、今野琉海氏、同大学工学研究院先端機械システム部門の倉科佑太准教授、田川義之教授、および慶應義塾大学理工学部機械工学科の尾上弘晃教授との共同研究により実施されました。また本研究は、JSPS科研費(24K00831)および公益財団法人 藤森科学技術振興財団の助成を受け実施されました。

研究成果
 本研究では、遠心力によるマイクロゲル粒子の生成方法に超音波を融合させることで新たなマイクロゲル粒子生成手法を開発しました。具体的には、遠心分離機で回転させながら、内部に搭載したガラス管に超音波振動を付与することで、ガラス管の先端を1秒間に10万回振動させるマイクロゲル粒子生成装置を構築しました。このマイクロゲル粒子生成装置を用いることで、従来の100倍以上のみずあめ程度の超高粘度(ハチミツやマヨネーズよりも高い粘性)のプレゲル溶液を微細なガラス管先端から射出して直径150 ?m(マイクロメートル)のマイクロゲル粒子を生成する方法の構築に成功しました。続いて、超高粘度のアルギン酸ナトリウム溶液からアルギン酸(注2)のマイクロゲル粒子を生成することで、このマイクロゲル粒子生成装置の性能を評価しましました。さらに、他の高粘性のハイドロゲルへの応用として、コラーゲンゲルを含有するデモンストレーションを実施しました。その結果、本生成手法を用いて細胞を封入して培養できることを確認しました。具体的には、細胞と混合したプレゲル溶液から、細胞入りのマイクロゲル粒子を生成し、封入後の細胞の生存率を評価するとほとんどの細胞が生存しており、本手法による細胞封入が有効であることを確かめました。このことから、遠心力と超音波を融合したマイクロゲル粒子生成装置が生体試料にも活用できることを実証しました。

今後の展開
 本研究では、遠心力によるマイクロサイズの液滴生成技術に超音波技術を融合することで、超高粘性のプレゲル溶液からマイクロゲル粒子の加工に成功しました。マイクロゲル粒子は細胞を封入することや粘性の高い他のハイドロゲルも含有できることから、さらに適応するハイドロゲルや生体試料の応用範囲を広めていくことで、創薬研究や再生医療への社会実装を目指します。

用語解説
注1 )プレゲル溶液
ハイドロゲル化する前の高分子水溶液の状態。プレゲル溶液に含まれる高分子を架橋することで、ハイドロゲルの形が形成される。
注2 )アルギン酸
コンブやワカメなどの海藻に含まれる天然の多糖類(食物繊維)で、海藻のぬめりの元となっている成分。二価の陽イオンとイオン架橋することでゲル化する。食品、医薬品、化粧品、繊維加工など幅広い分野で利用されている。
   

図1:従来用いられてきた遠心分離手法とその課題点。従来の課題を解決した技術である本研究のコンセプト
(Bando et al., Small 2025を基に作成)。
図2:本研究の提案する遠心力と超音波を融合したマイクロゲル粒子生成手法。①構築したマイクロゲル粒子生成装置。②ガラス管先端に生じる超音波振動。③アルギン酸濃度と射出量の比較による超音波照射の効果。④マイクロゲル粒子に細胞を封入して、その生存率を評価(Bando et al., Small 2025を基に作成)。

 

  ◆研究に関する問い合わせ◆
 体球网,足球即时比分大学院工学研究院
  先端機械システム部門 准教授
  倉科 佑太(くらしな ゆうた)
   TEL/FAX:042-388-7449
   E-mail:kurashina(ここに@を入れてください)go.tuat.ac.jp

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